「うちは豪邸でもないし、預金もそこそこ。遺産なんて分けるほどないよ」
もし、あなたがそう思っているなら、実は非常に危険です。
驚くべきことに、家庭裁判所に持ち込まれる相続トラブルの約76%以上は、遺産総額5,000万円以下の「ごく普通」の家庭で起きています。
なぜ、資産家ではない家庭の方が揉めてしまうのでしょうか?そこには「分けられない財産」という、物理的かつ残酷なハードルがあるからです。
1. 統計が証明する「普通の家ほど危ない」という事実
「相続税がかからないから揉めない」というのは大きな勘違いです。令和6年版司法統計によると、遺産分割事件数の財産額別の割合は以下のようになっています。
1,000万円以下が約33%、1,000万円超5,000万円以下が約43%で、全体の約76%が「5,000万円以下」のケースが占めています。
1億円以下約11%、 5億円以下約7%、 5億円超 0,6%、その他算定不能・不詳約6%
なんと、揉めているケースの3件に1件は、遺産が1,000万円以下なのです。「奪い合うほどの金がない」はずの家庭が、なぜ裁判までして争うことになるのでしょうか。
2. 最大の敵は「不動産(実家)」。ケーキのように切れない現実
資産家は、現金、株、土地、複数の不動産と多岐にわたる資産を持っています。そのため、「長男にはこの土地、次男にはこの現金」とパズルのように組み合わせることで、平等(あるいは納得感のある形)に分けることが可能です。
しかし、財産が「古い実家とわずかな貯金」だけだった場合、どうなるでしょうか。
不動産はケーキのように包丁で切り分けることができません。この「不可分性(分けられない性質)」こそが、争いの最大の引き金です。
3. 兄貴は住み、弟はお金が欲しい。そのギャップが火種になる
よくある具体例を見てみましょう。
【具体例】
親が亡くなり、残されたのは評価額2,000万円の実家と、預金200万円のみ。
同居していた長男:「これからもここに住み続けたいから、家を相続したい」
別居している次男:「法律通り、半分(1,100万円分)をもらう権利があるはずだ」
長男が次男に払う代償金(次男に不足分1,000万円を現金で渡すこと)を数千万円も持っていれば解決しますが、多くの場合はそんな余力はありません。結果として、「家を売って現金を分けろ!」vs「住む場所を奪うな!」という修復不可能な亀裂が入ってしまうのです。
4. 預貯金が「ない」からこそ、調整が効かなくなる
財産が多ければ、不動産を相続する代わりに現金を多めに渡すことで「調整」ができます。しかし、一握りの富裕層ではない、ごく標準的なご家庭にはその調整弁がありません。1円単位の取り分にこだわらざるを得ない状況が、きょうだい間の心理的な溝を深め、「昔、兄貴だけ得をしていた」といった過去の感情まで呼び起こしてしまいます。
まとめ:家族の絆を守るために
「財産がない」のではなく「分けやすい財産(現金)がない」ことこそが問題なのです。特に不動産が資産の大部分を占める場合は、生前に「誰が引き継ぎ、他の兄妹にはどう報いるか」を家族で話し合い、遺言書として残しておくことが、争いを、愛情で封じ込める最後にして最大の準備です。
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